2011年03月07日

老いる美学。

LIAISON−La fête de fille @渋谷Liaison 2011年3月12日(土)
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Photo:Hitomi Ueda




朝、目をこすりながらリビングへ出てみると、東京が一面真っ白だった。ほぼ視界ゼロ。細かな雪のカーテンが都会のどこかしこにも引かれてしまっていた。こりゃ、電車が遅れるかしら?と心配しながら、出かける準備をする。今日は久方ぶりのモデル業の日。モデル、といったってそれを生業とするプロのモデルさんみたいなお仕事とはちょっと趣が違う。私の大好きなジーンズブランド`Johnbull´が作る季刊誌に出させて頂くことになり、その撮影日なのである。


そういえば、私がまだ若かりし頃の90年代、こんなにチビでスタイルも良くないのに`キューティー´をはじめとするファッション誌にずいぶんと出して頂いた。その頃、ティーンネイジャーだった女の子たちは、私のイメージを雑誌の中に見出したかもしれない。あの頃の写真を見ると、当然だがずいぶんと若く、かわいい(笑)。けれど、同時に胸が痛くなる。私は自分の持っている美しさをぜんぜん理解していなかった。

美と書いて、唯一無二の物。と私は考える。美とは、絶対的なものではなく、他には比べようのない世界でひとつだけの個性なのだ。それは、どこから生まれるかといえば、美を持つ人、作り出す人が本気でそれを認めているところから始まる。簡単に言えば「わかっている。」ということなのだろう。他人の観点ではなくて、自分が、それを美しいと本気で思うこと。自分の中に自分を認める唯一のパトロンがいて、初めて他人が見てとれる外見に美は表れる。雑誌でもてはやされていた若くかわいい頃の私には、それがなかった。だから、痛ましい。内面と外見のつじつまがあっていない表情をしている。


それから10年経って、私は10年分老いた。今日のフォトグラファー、長山一樹さんのテストショットを見せて頂いた開口一番は「私、老いたなあ。」であった。そりゃそうだよ、生き物が10年歳を取ったのだもの。(笑)けれど、案外満足していた。若く痛ましかったころより細胞はだれていても、そこに映し出された私はつじつまの合った表情をしていたからだ。じゃあ、つじつまが合い出したのはいつの頃か?と思いを巡らす。それは、やはりパリに住んだあたりからだろうと思う。

ところで、先に私は自分のことを`チビでスタイルも良くない´と書いた。もちろん事実なのだけど、これはとても表面的でくだらないっちゃくだらないコンプレックスが生み出す主観的な自分の見方でしかない。こんな塩梅で、渡仏したばかりの頃の私は、魅力的なフランス男に「T’es belle! 君は美しい。」といくら言われても、「Non!」とはねつけていた。ところが、はねつけてばかりいたら本当に美しくなくなっている自分を、ある日発見したのである。冴えない顔をしていた私に、フランス男のひとりが言った。「背が小さいとか、手足が短いとか、それが一体なんだっていうんだ?君の魅力は君だけが持っているものだ。他の誰にも比べようがない。内面の輝きと外見の個性両方が相まって、人の美は初めて作られるんだよ。」当たり前のことなのに、ものすごくはっとした。狭い島国で、その時期時期に短いスパンで人様が勝手に作りだす廃れやすい流行の美学に、知らず知らず冒されてしまっていたのか。そもそも、そんなものに冒されるということは、自分に目をかけてやれていなかった証拠だ、と。そして私は、自分から目を離さぬようパリで暮らし、10年が経った。いろんなことがあって、苦労とは一言で片付けられない時間をかいくぐってここまできた。


「お疲れさまでした。」の一言で、長山さんの熱意ある撮影が終わり、撮られた写真を再び見せて頂いた。とても満足した。相変わらず変えようのない短い手足と老いた姿がそこにはあったが、私はぴったりとつじつまが合っていた。

言い忘れたけれど、今回のJohnbull季刊誌のテーマは「旅」。写真の中の私は遠い目をしている。何を見ていたかといえば、老いた10年分のひとり旅を、その激しく豊かだった旅路を、切ない気持ちで眺めていたのだ。


Photo1. 遠い。遠いなあ…

   2.フォトグラファー、長山一樹さん。


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posted by 猫沢エミ at 21:44| パリ | ファッション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする