2012年04月12日

アン・ポワン。ボン・ポワン。


Emi NECOZAWA & Sphinx 1st Album【Pyramidia】
Release Anniversary LIVE @SARAVAH東京・渋谷 2012 年4月14日(土)
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今日はよく海外のことを思い出した日だった。と書くと、全部過去のことみたいに思われてしまうかもしれないが、私は過ぎた日々がたとえ昨日のことでも、こまめに思い出を反芻する、牛のようなところがある。

現在進行形の海外との繋がりは、主にフランスであるから、人から見れば旅の多い、しょっちゅう世界を駆け巡っているかのような印象を持たれるかもしれない。が。はっきり言ってしまえば私ほど出不精な、ほおっておけば家にばかりいる人もいないのではないかと自覚する。

日本人はもともと農耕民族の定住型だから、一所にいると落ち着く人々なのだと思う。例に漏れず私もそのひとりで、何か手を打たないと一生日本という小さな島国から出られなくなってしまうのではという不安の塊が、30歳をすぎての突如フランス移住に踏み切らせた理由なのかもしれない。そして、大変ではあったけれど、それは私の人生に代替えのきかない貴重な経験をもたらした。

それでも、人から「ジェットセッター」だの「活動的」だの言われるたびに、いえいえ何をおっしゃる…という気持ちが一番前に立つのは変わりがない。だって、東京にいればほとんど家にいて、しかも家の中の仕事部屋の椅子の上か、リビングのソファの定位置の2ヶ所、センチメートルでいえば、ほんの30p四方の上に居るだけなんだもの。パリだって同じだ。アパルトマンが見つからなくてパリの市内中を点々とした2年間を除けば、最近はパンテオンの裏手にあるアパルトマンの、仕事椅子の上と、ダイニングテーブルの椅子の上にちょこんといるだけ。そりゃ取材でたまに出かけることもあるけれど、仕事にしていなかったら、自分で旅をプロデュースすることはめったにない。ときたま、やっぱり仕事で旅に出ると、もうこのまま家に帰らず、ずっとずっと世界を巡ってみたい…などと思うこともあるれど、やっぱり家に戻って「落ち着くなー」とか言っているのが関の山なのだ。


海外に出ると、若い頃からものすごく旅をしていたり、いろんな国の学校を点々としている人に巡り会う。ところが、私の出会ったそうした人たちが、暮らした分量だけ何かを自分のものにしているわけではないことが、意外と多くわかった。点々として移動していることで、何かをなし得た気分になっている人もいた。もちろん、移動の分量だけ、たくさんの経験が体の中に落とし込まれて輝いている人もいたけれど、みんながみんなそうじゃないのが面白いなと思ったものだ。

逆に、プログラマーや家で作業する出不精を生業としているような友達で、びっくりするほど世界事情に長けている人もいる。アンテナは、その人の移動行動と、実はあまり関係なく、収拾した知識を自分の中へ落とし込む作業は、その人のセンスと好奇心、努力を楽しみに替える能力に比例しているのではないかと思うのだ。

石の上にも三年、という言葉があるけれども、おそらく仕事椅子の上にも三年、リビングのソファの上にも三年、なのだと思う。目の前を行き過ぎる情報の山から、自分の人生に必要なものを選び取るセンスや、人の価値観を自分の価値観にすり替えない勇気も含めて、何かひとつのことをやり出したら最低三年はかかるのだよ、という先人の教えは正しい。


牢屋に監禁されている人も、世界を船で渡り行く人も、その人が30p四方のアン・ポワンで出来ることすべてをやろう、知ろうと思えば世界は30p四方のボン・ポワンに変わる。出不精なジェットセッターは、いつもそんなことを考えてみるのである。






posted by 猫沢エミ at 00:39| パリ ☁| なんてことない日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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