2013年06月29日

『14歳』『ミュージシャンと猫』−佐々木美夏さんのこと



LA VIE AVEC UN CHAT et LA MUSIQUE- Kyoto,Wakayama,Tokyo
2013年7月12 日(金)京都、13日(土)和歌山、14日(東京)
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先日のパリ渡航の前日ぎりぎりにAmazonから届いた本があった。それが、音楽ライター・佐々木美夏さん(以下:みかりん)の最新本『14歳』だった。
 
14歳、と聞いてみなさんは何を思い浮かべるだろう?今、流行の単語“中二病”も14歳。90年代に起きた神戸連続殺人事件の犯人も当時14歳。楳図かずおの集大成ともいえる漫画も『14歳−フォーティーン』だったりと、決して明るいとはいいがたいイメージが列挙し、大人と子供の境目に出現する異次元の年代。その14歳をタイトルに掲げた本の帯に書かれていた文言は、「12人のミュージシャンが初めて語った“あの”1年。〜悩めるすべての子供たち、親たちに捧げるメッセージ。」だった。

パリに到着して、日本人には深さの足りない、しかし長さは過剰なバスタブに浸かりながら、毎晩『14歳』を読んだ。気がつけばお湯が水に変わっていて、へっくしょい!と日本人ならではのくしゃみをしてぶるぶる震えながら、急いでベッドにもぐりこまねばならぬほど、みかりんの『14歳』は面白かったのだ。多分、通しで3回は読んだと思う。旧レーベルの先輩にあたるコレクターズ・古市コータローさんの、知られざる過酷な14歳時代から始まり、坂本美雨さんのN.Y黒春時代。そして同郷福島出身、サンボマスターの山口隆くんの章では、あまりの田舎ゆえ、育たざるを得ない妄想と野心がまざまざと蘇った。ミュージシャンは単体の生き物としても面白いのに、その曖昧模糊な各人の14歳をインタヴューし、本にするとは。さすがみかりん…やるな!と思ったのと同時に、じゃあ、ライターがみかりんじゃなくてもこの本は出来たのか?と言えば、それは根底から違うだろうとすぐに気がついた。
 
こんなことを言ってはなんだが、ミュージシャンはライターを基本、信用していないと思う。少なくともコロムビア時代の私はそうだった。たしかに、個性の強い面倒なキャラクターと真っ向勝負をせねばならぬ音楽ライターは、大変な仕事だと思う。けれど、上がって来る文章のほとんどが「そこまで逃げなくても。」とか「こんなんだったら、実際に話を聞かなくても書けたでしょうに。」というものだったから。(もちろん、メジャーアーティストにはレコード会社や事務所の検閲が入るから、中には苦しい思いをして文を練り上げた方々もいたとは思うけど。)だからこそ、たまに出逢う「こいつは出来る!」と思うライターさんには深いリスペクトを傾けた。ちなみに今までで「こいつは出来る!」と思ったライターさんは、作家になる前夜の嶽本野ばらさん、小田島久恵さん、そして『14歳』のみかりんだ。なんて書いてしまうと「また適当なこと言って。まだエミちゃんにインタヴューしてないでしょうが。」とみかりんに失笑されてしまいそうだが、それにはちゃんとした理由がある。

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そもそも、みかりんとの出逢いは、彼女の別著『ミュージシャンと猫2』で原稿を依頼されたことがきっかけだった。そのときも寄稿という形だったから、私は彼女のインタヴューを受けてはいないのだけど、献本された『ミュー猫2』には、猫を通した様々なミュージシャンの生のぬくもりとか手触りが、まるで自分も取材に同行したかのように鮮やかに綴られていた。猫と飼い主、どちらが獣なのかわかったものではないミュージシャンの面々に、ペンひとつで切り込んでゆくみかりんの姿が文章からありありと伝わって来て、「ああ、佐々木美夏というライターは、本気でミュージシャンを愛してくれているのだな。」と思ったのを覚えている。寂しがりやで複雑怪奇なミュージシャンは、いつもライターさんに愛されたがっているのに、ライターさんたちは、なかなか真正面に向き合ってくれないものなのだ。ある意味、毎日が肝試しみたいな職業のプロとして、みかりんの文章には、肝を冷やしてもかまわない覚悟が見てとれるし、そこにすがすがしさと癒しを感じる。たぶん、獣当事者であるミュージシャン以外の人が読んでも、それはちゃんと伝わるに違いない。

 話は『14歳』に戻る。まず、この本を読んで、おそらく皆が最初に思うことは「自分の14歳ってどうだったっけ?」ではないだろうか。私も真っ先に思いを馳せた。忘れていた異次元の年代へタイムスリップし、扉を開けてみれば、そこには今の人生を形作るための材料があらかた揃っていることに驚く。哀しみの越え方も、最初の指針も、なんらかの始まりが14歳であったのだ。そして、今みたいに経験から道具を引っ張り出す術を持っていない14歳の自分が痛ましく、愛おしく感じる。置き去りにしていた出発点を、やはり同じく痛ましかったり、愛おしい各ミュージシャンの14歳に触れることで、初めて葬ってやることができたと、イラつくほど浅いバスタブの中で、私はしみじみ思った。


年上&音楽業界の先輩でもあるみかりんに、なんだかめちゃくちゃ言いたい放題書いてしまってごめん。そして、ミュージシャンを愛してくれてありがとう。3冊の素晴らしい本を世に出してくれてありがとう。

『14歳』エムオン・エンタテインメント刊 ¥1,680

『ミュージシャンと猫』(P-Vine Books)スペースシャワーネットワーク刊 ¥1,680

『ミュージシャンと猫2』(P-Vine Books)スペースシャワーネットワーク刊 ¥1,680


posted by 猫沢エミ at 01:56| パリ ☁| 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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