2012年06月25日

Les Neiges du Kilimandjaro~日常、という人生の物語。


“S meets S”−Emi NECOZAWA & Sphinx & 島裕介 LIVE @渋谷gee-ge 2012 年7月16日(月祝)今をときめくジャズ・ユニット“Shima&Shikou Duo”より、Tpの島裕介さんがスペシャルジョイン!この機会をお見逃しなく!



フランス人は感情表現が豊か+エレガントなので、哀しいことも泥臭いことも、日本人の自分たちが同じくするよりも、なぜだかドラマチックに見える。というのは、おそらく「隣の芝生は青い」現象のインターナショナル版で、フランス人から見た日本人は、また別の感慨を覚えるのかもしれない。どちらにせよ、いつも思うことは、心の根底に流れる感情だとか、日常の小さな幸、不幸は、何人でも大差がないということ。


そんなことをしみじみ再確認できる映画を、渡仏の直前に見た。監督のロベール・ゲディギャンは、1953年、南仏の港街マルセイユに生まれる。それから彼は映画監督になったわけだけれども、物語は常にマルセイユを舞台に作られている。まるで、山田洋次といえば寅さん、寅さんといえば葛飾柴又…(山田監督はもちろん違うものも撮っているけれども)というように。

1998年「幼なじみ」1997年「マルセイユの恋」など、日本でも彼の作品を見た方は多いのではないだろうか?人が死ぬような衝撃的な事件も、奇抜な設定も演出も一切ない。ゲディギャンが常に描こうとするのは、どこにでもいる地方の田舎町でつましく暮らす、普通の人々だ。その人々が、人と出会い、恋をし、悩みを抱え、それを乗り越えようとする当たり前の日常から、私たちにも身に覚えのある孤独や挫折の苦い想いを丁寧にすくってくれる。

「Les Neiges du Kilimandharo=キリマンジャロの雪」は、アーネスト・ヘミングウェイの同名短編小説のタイトルだが、物語のベースは、ビクトル・ユゴーの長編詩「表れな人々」に着想を得て作られた。


物語は、マルセイユの港で、とある労働組合員がリストラのくじを引く場面から始まる。そのくじ箱を差し出すミシェルは組合長として、長年組合員を大切に仕事をしてきた。ミシェルは自分の立場を悪用することなく、くじ箱に自分の名前も加え、リストラの対象を買って出た。引退するにはまだ早く、かといって再就職は難しい年齢のミシェルは、突然失業者になってしまう。そんなミシェルを影で支えるのは、今年結婚30年を迎える妻のマリ=クレールだった。夫が自ら選んだ失業の選択に、マリ=クレールは文句ひとつ言わず、いつも通りに家政婦のパートへ出る。老婦人を面倒見るマリ=クレール、しかし、雇い主である老婦人の娘は、上から目線の小馬鹿にした態度でマリ=クレールを見下すのだった。ある日、子供たちがミシェルとマリ=クレールのために、サプライズパーティーを企画する。そこで、カンパで集めたお金とアフリカ旅行のチケットをプレゼントされ、感激するふたり。ところが、元組合員でミシェルと同様にリストラされたクリストフが、それを遠目で見ていた。数日後、クリストフが悪い仲間たちとミシェルの家を襲撃し、お金とチケットを強奪。しかし、ひょんなことから、犯人がクリストフであることがわかり、ミシェルは怒りに震えると当時に、なぜ彼がそんな暴挙に出たのか?むしろその理由に惹かれてゆくのだった。同じくして妻のマリ=クレールも、クリストフがやむを得ない事情で、ふたりの弟を面倒見ていることを知り、気がつけば、こっそりとクリストフの弟たちの母代わりになってゆく。

ゲディギャンが描こうとしたミシェルとマリ=クレールの善意は、負の歴史を乗り越えるために必要な、受容と許しではないか?どうして、殴りつけられ、怪我を負わされ、その上金品まで奪われた相手に、そこまでの善意を尽くせるのか?小さな不幸と小さな許し、その連続で人生は出来ている。つましくも、懸命な、ごく一部の人を除いた庶民の暮らしに横たわる優しい「匂い」。成功とは縁のない、やつじつまの合わない人生の悲喜こもごも。それをおしつけもなく描くのなら、ゲディギャンをおいて他にはいない。


ところで、マルセイユは私の大好きな街。地中海の紺碧の海、陽気な人々。あまりに好きすぎて、一度なぞ移住を真剣に考えたこともあったっけ。そのときフランス人の友達に散々言われたのは「不況が深刻だからねえ。ヴァカンスならいいけど、地元至上主義の閉鎖的な側面もあるから、生活するには大変なところだよ。」ということだった。日本と同じく、地方の港街の不況、失業。それにまつわる人生の紆余曲折。ゲディギャンのマルセイユ映画を見ると、フランス人も、私たちとなんら変わりない、ひとりの人間なのだと肌で感じることができる。


● Les Neiges du Kilimandjaro=キリマンジャロの雪

2012年6月9日(土)より、岩波ホールにて公開中♡
全国順次ロードショー
http://www.kilimanjaronoyuki.jp/







posted by 猫沢エミ at 04:39| パリ ☔| フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月19日

パリで映画を♡〜The ARTIST


Quand la femme tient la barre de sa vie N°6 −猫沢エミライブ&トーク@TRAUMARIS 恵比寿 2012 年3月2日(金)只今、絶賛ご予約中♡




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今年のフランスは寒い。次号Bonzour Japonの取材のため、パリのあるイル・ドゥ・フランス県のすぐ隣、イヴリーヌ県へ出かけた2月頭は、−10℃という猛烈な寒さだった。(パリ市内は−6℃)ここまで寒くなってしまうと、はっきり言って外に長時間出ているのは、根性云々の問題ではなく、体的に厳しい。ルイ14世他歴代の王が生まれた産屋シャトーのある広大な庭を、撮影のために歩いていた時など、2度ほど気が遠のいた。寝たら死ぬ…死ぬ!と、フォトグラファーのみかちゃんと互いに声をかけあってたもの。笑 

そもそも、忘れがちなことなんだけど、フランスは、樺太とほぼ緯度が同じの超北国なのである。だから寒いのは当たり前なのだけど、こうも寒くなってしまうと、屋外の娯楽に易々と手を出す気にもなれず、自然に屋内の娯楽へ走るのだけども、その屋内娯楽も限られたものしかないのが、これまたフランスなんですねー。カラオケもゲーセンも居酒屋もない。で、皆何をするかと言えば、映画。

フランスにおける第7番目の芸術として掲げられている映画は、国民にとって日常には欠かせないもののひとつになっているなあと思うのは、ただの提議としてだけでなく、実際に様々なクラスの人が非常によく映画を見ていると、肌で感じる。たとえば、魚屋のムッシュから「今日は早く仕事を片付けなくちゃ!ピーター・グリナウェイのリバイバル上映がカルチエ・ラタンであるんだよ。」なんてすらりと出てくる。グリナウェイなんて、日本だと映画通しか知らない名前でしょう。

そして、映画そのものの値段も安い。設備の整ったMK2、UGC、Gaumontなどのグループ企業が経営する大型映画館でも、単発チケットで10€程度。それが、会員証を作ってしまえば、月20€代の会員費で見放題!毎月2本見れば元が取れてしまうから、映画通でなくても、大抵の人がどこぞかのグループ映画館の会員証を持っている。ちなみに、レンタルDVD・ビデオショップもあることはあるんだけど、はっきり言って置いてある数もラインナップもしょぼく、日本のTSUTAYAみたいな充実度とは雲泥の差。それならば、まだビブリオテーク(街の図書館)のレンタルDVDの方がずっといい映画が揃っているという具合。名監督のレトロスペクティヴや、実際に本人が登場するレクチャーやトークショーも頻繁に開かれているので、足を運ぶ機会も多い。それにね、映画っていうのは、そもそもあの大スクリーンで観るのが前提で作られているので、何もちまちま家の小画面で観るこたない。っていう考え方も定着しているのが、さすが第7の芸術・映画とされるフランスらしいところかな。


そんなパリで、映画を観ることは私にとって最大の娯楽であると共に、ぜひやりたい!ことのひとつだったのだけど、ここ数年、長くて2ヶ月という短い滞在のため、仕事が最優先になってなかなか映画を観られないでいたのだけど、今回は、うまく時間をやりくりして3本観た。その中で、一番がつんときたのが、ミッシェル・アザナヴィシウス監督の「The ARTIST」だった。

ところで、フランスで映画を観る時、大抵参考にするのが、街に流布している“前評判”(一般の映画レベルが高いので、意外と当てにできる)と、各映画館などが主催しているサイトでのバンドアノンス(予告編フィルム)。ちなみに、劇場用パンフレットなど作らない国なので、もっとつっこんだ映画の詳細は、自らインターネットなどで探す、もしくは新聞や映画雑誌の評などを見るのが一般的。そんな中、この作品の前評判は異常に高かった。映画上映時間近くに出かけても、いつも満員御礼だったため、映画好きの友達がサイトで私の分のチケットを予約してくれた。そして観た。


物語の舞台は1927年、アメリカ・ハリウッド。無声映画全盛のこの時代、時の人として名を馳せていた名優ジョージ・ヴァレンティンは、キザな仕草とウエットに富んだ演技で、スターの名声を欲しいままにしていた。駆け出し女優のペピーは、そんなジョージに尊敬の念と共に深い愛情を持っていたが、ひょんなことから彼の映画の端役に選ばれ、地道なスターへの階段を登り始める。そんな中、映画業界はトーキー映画への転換期を迎え、セリフのあるトーキー映画に疑問を抱くジョージは、あくまでも無声映画にこだわり、彼の輝かしい地位にかげりが見え始めるーー。

と、ストーリーは至ってわかりやすいものだが、この映画のすごいところは、ごく一部を除いた全編が、まさに無声映画時代の手法で描かれているところ。セリフにたよらないストーリー運びには、役者の表情、些細な身振り手振り、全身から溢れる魅力など、本来の役者の実力がごまかしのきかない形で映し出される。加えて、カメラのカット割、画角、アイディアなど、映画を作る基本中の基本がどれだけ高度なものかにかかってくる。近年、当たり前となったCG満載の映画手法からまさに時代を逆行した「映画とはいったいなんだったのか?」という、根源的な視点に立ち返った作品なのだ。しかも、ただ昔の手法を真似ただけではない。「セリフのない白黒サイレント映画なんかに夢中になれるの?」とお思いの方にこそ、ぜひ観て欲しい。栄枯盛衰に人生を翻弄されるアーティストの、切なく胸しめつけられる物語に、感涙し、気がつけばこれがサイレント映画だということを、忘れてしまっているだろう。

いやもう、泣いたよ…。隣に座っているお客さんが、私の号泣っぷりを観てぎょっとするほどに。笑 シンプルで人生の痛みと素晴らしさを的確についた無駄のない物語にも泣いたが、何より、監督とこの映画に関わった人々の、映画への愛に心底頭が下がる思いだったのだ。「映画は死んだ。特にフランス映画は。」と言われ続けた昨今に、この作品は、真の映画大国であるプライドと、愛、その正しい解釈の表明として、華々しい刻印を打った。大げさじゃなくて、この映画は、映画史にひとつの節目を作った記念すべき作品だと言える。

2011年のカンヌ国際映画祭で、あまりの前評判の良さに急遽コンペティション部門に格上げされ、あっという間に主演男優賞を受賞。その勢いは増し、2012年度アカデミー賞の最有力作品へと躍り出た。

私ね、仕事がらいろんな映画を観て、いろんな評を書きますよ。だけど、この作品に関しては、あくまで超個人的な感想しか述べません。じゃなかったら、この途方もなく素晴らしい作品に対して失礼だし、この作品に失礼を働くということは、映画史そのものに泥をかける行為だと思ってます。と、書いている側から思い出して涙が溢れてきちゃう。


パリから日本へ向うAIR FRANCEの機内。「The ARTIST」のフルバージョンが、機内オンデマンドで放映されていて、さらに2回連続して観た。2回とも号泣してしまい、またお隣のお客さんをびびらせてしまったのだけど、そんなことかまうもんかい。ちなみに、この映画はぜっったいに劇場で観てください。小さなスクリーンで観ても、きっと良さは100分の1になってしまうだろうから。映画館で観なければ成立しない、本来の正しい映画。ぜひ、貴方も劇場で映画史の一部になって欲しい。



◎ The ARTIST〜アーティスト
2011年 フランス作品 
監督/ミッシェル・アザナヴィシウス 
出演/ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン
* 4月7日(土)シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー他にて全国順次公開


□フランスMK2の「The ARTIST」バンドアノンス
 http://www.mk2.com/film/artist


♡「The ARTIST」こぼれ話
歴代の名作には欠かす事のできない名脇役として、かしこいわんこが登場する。(たとえば、イヴ・ロベールの“ぐうたらバンザイ”(1969)など)そんな名作のオマージュとして、この映画にも主人公のジョージの相方としてわんこが登場するが、これがまた泣かせるのなんの…。ちなみにこのわんこ、カンヌでPalm dog 賞を受賞して(笑)アメリカのTV番組に出演したんだそう!(上記、友達情報♡)その映像がコチラ。
http://www.palmdog.com/palm-dog-uggie-and-the-ellen-degeneres-show/







posted by 猫沢エミ at 02:45| パリ ☁| フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

愛してるって言わない、愛。


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Photo:Monsieur SHUHO


3.11の大地震からこのかた、平置きされた本だのCDが山積みのリビングで、ふと2003年N°7「生本」(売れっ子作家さんの短編小説、エッセイ雑誌)を見つけて、なにげなく開いた先が、原田宗典さんの`御大切−隠れ切支丹の一言´という一編だった。大変面白い内容なので、ところどころ引用させて頂く。

『こうゆう風に言うと、まるで人でなしかろくでなしのように思われるかもしれないが、私は「愛」という言葉が好きではない。もっとはっきり言うなら、嫌いである。−中略−いつのまにこんなふうになってしまったものか、はっきりとは思い出せないが、おそらくかなり少年の頃から、私は「愛」という言葉に何か胡散臭いものを感じ取っていたように思う。−中略−テレビの連続ドラマなんかで、「けい子さん、愛してるよ。」などと言う俳優を見るたび、そうゆう俳優たちは、実は本当に愛していないからこそ、その隙間を「愛しているよ」という言葉で埋めようとしているとしか思えなかった。本当の本当に愛し合っている関係ならば、「愛してる」という必要はないのではないか…。−中略−でも、言わなきゃわからないじゃない、と反論なさる方は、男と女の関係を忘れて、男と男の関係を思い浮かべていただきたい。本当の友達同士というのは、「友達だよな。」などと言葉にして確かめあったりするものだろうか。そんなのが「友情」であるはずかないと、誰だって思うはずだ。−中略−私の経験上は「愛」を言葉にして確かめたがるのは、主に女性のほうであった。−中略−`愛´という言葉は、英語のLOVEに対する翻訳語として、明治初期に現れた新しい言葉であるということを物の本で知って、快哉を上げてしまった。長年、自分が「愛」という言葉に対して感じ続けてきた違和感は、勘違いではなかった。−中略−前世紀末になって、物の本を読んで、LOVEという言葉に、より適切な感じをあてた人たちがいたということを知ったのだ。隠れ切支丹たちは、LOVEの翻訳に困って、結局`御大切´という言葉をあてた。つまり、すごく大切にすること。それがLOVEの本質である…』


まさに!と膝をぽんと一発打った。そういえば、自分の過去の恋愛を振り返ってみると、「おそらく相手は、私から彼に向ける情熱ほど私のことを愛してくれてはいないだろう。」と思う相手に限って、「私のこと好き?」などと尋ねてみたりしていたように思う。若い…そしてうざい。(笑)と、今はすんなり思えるが、当時は本当に若く、思慮浅かったため、おのずとうざい言葉もそれなりに発していたのだよ。

そもそも、男は名前をつらけれるのを嫌い、女は何かにつけて名前をつけたがる。パンツにも、カバンにも(それはお母さん。笑)っていうのは冗談だとしても、「ねえ、私あなたの彼女よね?」だの、「彼がなかなか結婚してくれって言わなくて…」だの。うざい、うざいよ。原田氏のおっしゃる通り、男はとてもシンプルな生き物だから、愛している分だけの態度しかとらないし、とれない。その態度から、愛を読み取れないのであれば、言葉で確認しなくとも、たいして愛してない、ということなのだ。そんな動物的な感情を言葉で縛ったり、関係に名前をつけることでどうにかしようと思うのは、女々しいひとりよがりである。形にとらわれて、シンプルな男の`御大切´に思う気持ちが見えない女もたくさんいる。せっかく愛されているのに、しつこく「私のこと好き?」などと、言葉で確認しようとすれば、男は冷めるにきまってら。

でも、アムールの国フランスじゃ、恋人同士はしょっちゅうジュテーム、ジュテーム言い合ってるんでしょう ?と、思っている方もいるかもしれないが、それもまたちょっと違う。彼らのJe t’aimeは、私たち日本人が思うよりも、ずっと重く、深い。むしろ、子供に向けられて発する機会をよく見る。もちろん、人によりけりで、簡単にJe t’aimeを使う男女も見ることは見るが、あまり知的な感じがしない。むしろ、恋人同士が日常互いの愛を確認する言葉は、J’ai confiance en toi−君のことを信頼している。とか、Je pense à toi−君のことを思っているよ。と、aimer−愛する、の入らない具体的なフレーズが多いように感じる。そこには、愛してる、などと確認する必要のない、互いを尊重し、大切にしているというニュアンスが含まれているのだ。

本来、愛は空気のようなもので、すかすかの言葉の虫取り網で捕まえておけるような簡単なものでもない。一瞬一瞬色を変え、自在に変化する。寄せては返す波のように…と愛の本質を歌いあげたのは、セルジュ・ゲンスブールの`Je t’aime,moi non plus−あなたを愛してる。俺もそうじゃない。´俺も愛してる。のではなく、俺もそうじゃない。のである。君が俺を愛していると今言ったその気持ちは、明日には、もしかしたら1秒後には、違うものになるかもしれないのと同じく、俺もそうじゃない。のである。わかるだろうか?愛をつなぎ止めることや、飼いならすことなど出来ないところに、真の苦しみと喜びがある。

そういえば、先日初めて開いた猫沢エミのフランス映画教室N°1で扱った、クロード・シャブロルの「悪の華」でも、晴れて恋人同士になったミシェルとフランソワが、劇中、一言もJe t’aimeを言わなかったことを思い出した。見ているこちらが、思わず微笑んでしまうほど、ふたりの恋はフレッシュで深いものなのに。それは、やっぱり彼らがJe t’aimeという言葉など介入する隙間もなく愛し合っているという証なのだと思う。


愛を捕まえようとしたりしてはいけない。所有したり名札をつけて、冷蔵庫で長期保存しようとすれば、次に扉を開いたときには、愛はもうとっくに賞味期限が切れて、かびがはえていることだろう。愛する人の気持ちを自分の周りに引き寄せる。そして自由に泳がせる。また、自分から相手への愛も、勝手に入り込んだりしてはいけない。相手のまわりを自由に漂い、包み込む。言葉で繋ぎとめないことで生まれる、自由と儚さが、互いを常によく見合って、大切に思い合う、一番重要なファクターになるはずだ。


Photo:2011年4月24日、渋谷LIAISONで行われた一回目の、フランス映画教室風景。
   次回は、7月10日(日)の予定です。




posted by 猫沢エミ at 01:44| パリ ☁| フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月07日

シヴェース!な一日と、問題回避に小技を利かせるの巻。

LIAISON−La fête de NOËL@渋谷Liaison 2010年12月18日(土)18:30 staet
チケットが残り少なくなっています!限定30名様限り、ご予約は急いで。パリのお土産つき♡



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ゆうべは結局朝の4時頃まで、ジャムセッションを見に来た友達と、セーヌ沿いの朝まで空いてるカフェで話し込み、自分のこれからの人生を真剣に考えてみたりした。

その友人も、その昔パリへやってきた当初は何もなく、とても貧乏で寂しかったと話してくれた。その寂しさは、聞いているだけでもひしひしと伝わる深いものだったが、今、友人は生き生きとここで暮らしている。決して楽ではないし、次々と問題は起こるものの「あの頃に比べたら、夢みたいだよね。思うままやってよかった。」と笑顔を見せた。やればやっただけのことが、面白いように還ってくる街、パリ。遅かれ早かれ、私はもう一度、この街に住む気がしてならない。

ジャムセッションに参加した次の日の朝、というのはフランス語学校時代からいつも辛かった。とにかく寝てないし、疲れている。だがしかしー、今日は是が非でも映画館に行かねば。先日、カンタン・デュピュの`rubber´を観て以来、彼の映画の方面の仕事ぶりがとても気になっていたのだけど、親友よちこが彼の長編作品がリバイバルでやっていることを教えてくれて、これは観なくてどうする?!ということになった。朝1番の上映とあって、お客さんはまばら。しかし、デュピュ好き(言い換えればミスター・オワゾ好き)って、やっぱりいるんだなあという客層。

さて、今日の映画は1996年フランスで公開された「Steak」。とある街に住む若者ブレーズは、ある日、友達のジョルジュがマシンガンをぶっ放して3人射殺してしまった直後の現場に居合わせ、ジョルジュの罪をかぶって7年も精神病院に入れられてしまう。7年間、世俗から離れていた間、世の中の風潮は一変し、ブレーズが病院から復帰すると、まるで時代が逆行したかのようにファッションは50年代に戻り、整形が流行って…と、へんてこなことになってしまった。ブレーズを迎えにきたジョルジュも整形中なのか、顔中包帯でぐるぐる巻きに。彼は`シヴェース´というグループのメンバーで、お揃いのジャンパー、おかしな挨拶、飲み物は牛乳、たばこを吸ったら袋だたき、という厳しい戒律を守っている。時代に取り残されたブレーズは、整形代を道で稼ぎ、足りない分は自前の整形(ホチキスで顔をつりあげるなど。笑)で補い、シヴェース加入を試みるが、自分の立場を奪われそうになったジョルジュが暴挙に躍り出るのだった。。。

と、書いてても「これで伝わるのだろうか?」と不安になる独特のストーリーなのだ。すべてがナンセンスギャグで、こうゆう笑いのツボがもともとない人には?マークの連続だろう。しかし、良い!デュピュにしろ、オゾンにしろ、面白い映画を作る人は、とにかくまずよく人を観察しているなあと思う。この世に渦巻く一過性の流行や考え方に対しての、するどいアンチテーゼ。それを、こんなにも馬鹿に、面白く描けちゃうなんて、あっぱれの一言だ。

ちなみに、主役のブレーズとジョルジュを演じたのは、フランスでは知らぬ人のいない、コメディアンERIC&RAMZY。フランスの笑いって、結構日本でいうところの難しい笑いに通じるものがあると思うんだよな。それで、シヴェースのメンバーだけができる、四角いボールと板みたいなバットを使う謎のスポーツがあって、それを観てたら`ごっつええ感じ´で、すごく好きだったコント`全日本実業団選手権´をすぐに思い出した。わけのわからないルールとプレイなんだけど、そのわかんなさがものすごく面白い。デュピュと松本人志って、感覚が非常に近い人なんじゃないかと思ったら、まっちゃんの映画作品にもとても興味が湧いてきた。さっそく日本に帰ったら観てみよう。

映画はとてもよかったんだけど、その後、エネルギーが切れてしまったのか突然の謎落ちに見舞われる。夕方までうじうじと、今年最悪のうじっぷりで自分でも手をこまねくが、最後はそんな自分にとことん呆れ、風呂に入って浮上する。パリは、いろんなトラップを生活の中でこまかくしかけてくるヤツだが、さすがにつきあって長いからなのか、そうゆうトラップ(自分の気持ちと行動ひとつで良くも、さらに悪くもなる罠。)を、最悪の状況にならないように自分をぐっとコントロールする術を少し身に付けた気がする。意外と今回の滞在では、以前ならもっと面倒に悪くなる状況を、力み無く乗り越えていることに気がつく。

ひょいひょいとトラップを超える(ことを意識せずにやっている)私を見て、パリがほくそ笑みながら、もっと高いハードルをがたがた後ろで用意している音も聞こえてるけど。笑



Photo.ポンピドゥーセンターの横っ腹すぐ前にあるのが、MK2-Beaubourg
   (エムカードゥ、ボーブール)こちらで火曜日の朝11:25(バンドアノ
   ンスなし)1回限りでまだ上映中。興味のあるパリにお住まいの方、
   ぜひ観てみてね。

http://www.mk2.com/filmscinema-3884-steak.html

↑このアドレスの`Voir la bande annonce´で予告編が観れます。





posted by 猫沢エミ at 00:00| パリ ☁| フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月30日

殺人タイヤも恋をする♡rubber

LIAISON−La fête de NOËL@渋谷Liaison 2010年12月18日(土)18:30 staet
ーチケットの予約が開始されています。限定30名様限り。パリのお土産つき♡ー



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朝方、Bonzour Japonの第一校正を終えて、ぐんと気が楽になった月曜日。

外は寒いが、ぜひ、このくそ寒いパリへ繰り出したい。そう思って、行きたかった映画のバンドアノンスをあれこれ見ていたら、カンタン・デュピュの「rubber」がやってるじゃん!

カンタン・デュピュといってもピンとこない方、多いのではないかしら?ミスター・オワゾ、もしくはぬいぐるみ、フラット・エリックの生みの親と書けば「ああ、彼か!」となる方もいるやもしれぬ。音楽プロデューサーなど幅広く刺激的な活動を展開するデュピュの長編第3作目といえば、見ないわけがない。が…、あらすじを見ると古ぼけたタイヤが主人公。しかも、こいつが殺人タイヤというではないの。アヴァンギャルドに笑いが入った、シュールな映画なんだろう。というあらかたの予想がついたところで、ポンピドゥーセンター横にあるMK2 Beaubourgへ。ところが、外まで人がごった返しているではないの。まさか、皆rubber を見に?と一瞬ありえないことを考えるも、すぐに、別のホールでイヴェントがあることがわかり、一安心。はいはい、ちょいとごめんなさいよ…と人をかき分け、地下の小さなホールへ。(小さなホールだけれど、満員でした。)

で、見たよ。タイヤが主人公の映画を。結論から言っちゃうと、相当面白かったよ、私的には。これに匹敵する映画っていったら、やっぱり2006年のダフトパンクの`エレクトロマ´かしらね。笑えるのか笑えないのか、観る人の力量を問われる微妙〜な笑いどころ。そして、主人公のタイヤ(名前がちゃんとついてんのね。ロバートっていう。笑)が、人間以上のリアリティで、喜怒哀楽と恋愛感情を表現しちゃっているところが凄いですよ。不条理という点では、ゴダール的でもあり(Week-endみたいな)、劇中にすでにタイヤの素行を見守る観客がいる、という点ではアンディー・ウォーホルの実験的なアートフィルムに通じるものも感じる。そう、この映画は劇中劇なのだけど、劇中のアホな観客たちを「アホだなあ〜」と言っている自分たちも、実はこんな映画見てること自体、アホなんじゃないかと、終いには誰がアホなんだかわからない、永遠のアホ・スパイラルへ突入していることに、ふと気がつく。

とにかく、こうゆう感覚がない人には、きつい映画かもしれないが、少しでもあると自覚するあなた!ぜひ、見てください。(そもそも日本に来るのかが不安だが…)そういえば、次号のBonzour Japonでも、梶野くんが連載にこの映画のことを詳しく書いていて、私はまったく明るくない、フランスのエレクトロ系の人たちとのつながりとか、とても面白いリポートをしているので、ぜひもらってみてね!配布は、2010年12月10日!必見ですよー。






posted by 猫沢エミ at 00:00| パリ ☁| フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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