2010年09月08日

おいしいワインとフレンチをゆっくり食べること

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表題は、私が人生の中でもっとも好きな行いのひとつ。もちろん、日本料理やチュニジア料理、イタリアン、中華、スカンジナビア料理etc…世界中のあらゆるおいしいものが大好きだけれど、やっぱりフランス料理は格別だなあと思う。しかしこの表題だけ見ると、こじゃれた雑誌のありがちな特集表題みたいで、自分で書いててもなんだかいけすかないのだけど、真剣にこれが好きなんである。特に忙しい日々が続いたり、節約生活でシンプルなご飯が続いたりすると「あー…フレンチが食べたい。おいしいワインと共に、時間をかけてゆっくりと、食べることだけに埋没して夢見心地になりたい。」と思う。

フレンチのよいところは、料理そのものもさることながら、その食べ進めてゆくスタイルによるところが大きい。アペリチフで軽くテンションを上げて、前菜、メイン、そしてデセール。その後はエスプレッソをくいっと飲んで、のんびりディジェスティフを楽しむ。あくせくしない、フォークとナイフをゆっくり丁寧につかって、でも気取らず会話を楽しみながら。この食事の流れが、フランスの日常の家庭でもごく当たり前なのだと知った時には、かるい衝撃を覚えた。私が最初にパリで住んだ20区のアパルトマンで、2Fに住む大家さんと週に2回、夕食をともにしていたときのこと。前菜がたとえ切りっぱなしのにんじんスティックだけだったとしても、メインがたとえイカをトマトでシンプルに炒めただけのものだったとしても、きちんとこの流れでゆっくりと食事を進めてゆく。すると、ただのにんじんが、ただのイカがとてもありがたくおいしいものに感じられるから不思議だ。もちろん、それらの料理は素材が良くて実際とてもおいしかったのだけど。

今日は、久しぶりにお昼の予定が私もOも空いていたので、大好きな市ヶ谷のフレンチレストランへ予約を入れた。台風の影響であいにくのものすごい豪雨の中、それでもにこにこと傘をさしてびしょびしょに濡れながら(ほとんと傘は役に立たす)グローブ・デュ・モンドへ向かった。このお店のことは、書くか書かまいかずいぶんと悩んだ。本当においしくてコストパフォーマンスも高いこの店は、私にとって、秘密にしておきたいお店だったから。この19席のみの小さなビストロは、出版社イーストプレスの名物フレンチムッシュで友人の門林さんが教えてくれた。「猫ちゃん、僕が東京で一番おいしいと思うビストロなんだよ。」その言葉は正しかった。とても。

シェフの丹野さんは、フランスの各地で修行した方。でもそんな肩書きはあまり重要じゃなくて、とにかく一口食べれば、味の確かさに舌がもんどりうつ。ここ!というジャストな塩加減、いっさい手抜きのないソースの深い味わい、付け合わせの野菜に至るまで、これ以外にはありえないタイミングで火からおろされた料理の数々。しかも、元がとれているのだろうか?と心配になってしまうほど、ありがたいお値段。ランチは、日替わりの1皿もの¥1,100(!)と、数種類から選べる前菜+メイン¥1,600(!)に、なんと手作りのデセール盛り合わせがついて、驚きのこのお値段。この価格設定がいかに破格なのかは、食べればすぐにわかる。今日は、前菜にフォアグラのプリン、メインに牛肉のステーキをチョイス。Oが選んだのは、前菜がいなだのカルパッチョ、メインが仔鴨のもも肉はちみつ赤ワインソース。フォアグラのプリンは、思わず目を閉じて、ついでに世界のすべてを閉じて脳がとろけた。いなだのカルパッチョのジャストここ!という塩と酢の加減。そして、仔鴨のソースのなんと豊潤なことか。フォアグラのプリンを思わず「おかわり!」と頼みたくなったけれど、ぐっと我慢。(笑。おかわり注文はできません。おそらく。)

ここでは、シェフとお弟子さんが、小さなキッチンでリズミカルに立ち働く様子がよく見えるカウンター席に座るのが好き。おいしいものが作られる現場を眺めながら、できたてのおいしい料理を食べるこの至福の時よ。夜は、デセールも選べる¥3,500にて。また、がんばって働いてこよう。そう心から思える大好きな東京のフランス料理。帰りは、行きよりもさらに雨あしのひどくなった道を、さらに役に立たなくなった傘の下、びっしょびしょに濡れながら、にこにこと駅へむかって歩いた。ああ…とても満足。


● GLOBE DU MONDE−グローブ・デュ・モンド
 
  東京都千代田区九段下4-3-17
  明君モナーク九段 1F
   03-3221-6009
日・祝定休 *ランチ、ディナーともにご予約を。


Photo. 前菜のフォアグラのプリン。こんな手のこんだものがたった¥1,600の
   ランチメニューで出てしまうところがそもそも驚き。そして、ほんのり
   甘いとろけるようなフォアグラの風味は、フォアグラをそのまま食べる
   のは苦手な人でもぺろりといけてしまうはず。
   付け合わせのバナナがこれまたよく合うなあ。。。


posted by 猫沢エミ at 00:00| パリ ☁| 食べ物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月24日

良夏のバロメーター

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突然ですが、かるいわきが、もしくはその人を判別できる体臭をもっている人の方が、無臭な人よりも好きだ。なんて書くと、猫沢さんは変わってるなんて言われそうだが、とにかく無臭であることは私にとって、つまらないということなんである。だから、男女問わず香水をつけている人の方が好きなのと等しく、冒頭の匂いを持つ人たちも好きなのである。人間は動物で、動物には個体を識別する意味でも必ず匂いがあるのだから、無臭なのはとにかくつまらない。

夏、体臭のある人とすれ違うとき、頭の中に流れる歌がある。♪夏がくーれば思い出すー、はるかな尾瀬−−−…遠い空♪(尾瀬−−−…の伸ばすところで、匂いを吸い込む感じです。)匂いは、記憶と密接につながりを持っていて、とくに生き物の匂いの濃くなるこの季節は、おのずと思い出がたくさん生まれる季節なのだ。

そういえば、かなりに大人になってからも、私は夏という季節が苦手だった。夏が苦手というよりも、青い空が怖かったのかもしれない。晴れ晴れとした、雲ひとつない空は、弱点だらけの自分の身を隠す場所がなく、見ているだけで、ひどく追いつめられた。その、すべてを洗うような青の色も、残酷に映っていた。ところが、10年ほど前からなにかがふっきれて、夏が大好きになった。うんと子供のころは大好きだったのに、複雑な思春期から、人を信じにくい環境にあった20代いっぱいまで、私の心は確実に閉じていたせいだろうと、今は思う。フランスに行ってからは、もっと夏が好きになった。フランス人は夏が大好き!だって、暑くって太陽が燦々としていて、もっとも生きてる感じがするから。という、とても単純明快な理由を持っているフランス人と暮らしたら、それまで夏に対して屈折した思いを抱いていた自分をアホらしいと単純に思えるようになったのだ。そう、夏はよい。暑くて太陽が燦々としていて、生きている感じがする。これでいいのだ。

で、別に深い私の夏論をかまそうとして書き出したつもりじゃなかったんだけど、なんだかいろいろ思い出して書いちゃったな。すいか。そう、すいかの話ですよ。良い夏かそうでないかのバロメータは、ここ数年変わらず1.どれだけすいかが食べられるか 2.彦九郎の水まんじゅうをどれだけ食べられるか この2点のみに絞られる。2.の彦九郎とは、水天宮と新大橋にある和菓子屋さんのことで、そこの水まんじゅうが大好きなので、夏限定のおいしいお菓子を食べられるだけ食べたいという発想。だがしかし、今年はあまりにも、あまりにも暑く、水まんじゅうをそれほど欲しなかった(言い換えれば、体が欲することができなかった)ため、もっぱらアイスキャンディーを食べてしまった。そして1のすいか。これもまた、あまりに暑すぎるため、すいかの値段が高騰してしまい、なんだか手が出しづらい残念な結果に。しかし、今日は去る気配のない、どこまでも続く夏の思い出にと、すいかを食べた。やっぱ、夏はすいかだなあ…。

ところで、憧れのすいかがある。北海道のどまんなかにある当麻町で作られている`でんすけすいか´。すいかといえば、しましま模様が定番だが、このすいかはボウリングの玉のごとく、一面真っ黒の姿をしている。これがとても甘いくておいしい!と、14年も前から目をつけているのに、未だに食べられていない。コロムビアでアーティストをやっていた時代、北海道にラジオ番組を持っていて、隔週で月に2回も北海道に行っていた。新千歳空港にでんすけすいかが売られていて、いつも欲しいなあ…しかし、手荷物プラスこの重いすいかをひとりで家まで運ぶ勇気がない(宅急便という手を考えつかなかったほど社会性がなかったのと、給料が死ぬほど安くて買えなかったという2つの理由)ため、とうとう買わずじまいだった。今じゃネットでなんでも買える時代になってしまったから、さっさと買って食べてみればいいのに、「でんすけすいかは、新千歳空港で買わないと…」という謎のトラウマが、私の中で巣食っている。

今年はすいかをたくさん食べられそうにもない。でも、そのおかげで良夏のバロメーターのバリエーションが増えたから、まあいいや。夏は、深く物事を考えなくていい。脳みそをベランダに干して、笑って日に焼けて、プールの後の子供みたいに心地よい倦怠感の中、ぐっすりと眠るのだ。


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2010年08月23日

Go!Go!浜町プロデュース★

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どこか親しみを帯びた風バンドの名前ではない。ましてや、おしゃれインテリア集団とか、アイドルを世に送り出すプロデューサーでもない。うちの近所の八百屋、それが`浜町プロデュース´である。この近くにスタッフゆうこりんが住んでおり、安くて品物が良い、ということでうちの事務所内だけで(いや、世間的にはもっと広範囲に違いないが)大人気の存在だったのだ。

野菜が高い昨今でも、浜プロ(と、我らは呼ぶ)なら嬬恋産のみっしり葉の張ったキャベツが1玉120円。限定産地のバナナ1房5本が、なんと98円ですよ、奥さん!と、思わず誰かに教えたくなるお値段。その他、豆腐が1丁50円とか納豆4パックで100円など、たくさん買っても500円を簡単に切る嬉しいお値段。先日もいそいそと買い出しに出かけると、店先でとあるマダムが店員さんをつかまえて「もうね!ほんと、浜町プロデュースさんが出来てから、うちの家計がどんなに助かっていることやら…」と、熱く語っているのを目撃。マダム、そのお気持ち、わかるわあ〜。と、心でうなづいたのだった。

浜プロで買い物をしていると、かならず思い出す漫画がある。よしながふみ、の`きのう何食べた?´。ゲイカップルの日常料理漫画なのだけど、ここに出てくる料理好きの弁護士・筧(カップルの片方)が、日々スーパーの特売に足しげく通って、今日は何が底値だの、お買い得だのとちまちま買い物をしている様を読むと、なんだかひどくほっとするのだ。高収入のはずの弁護士・筧の堅実な生活っぷり。そこに、日常のリアルが溢れていて、小さな満足を見つける楽しさが、ひしひしと伝わる。

そりゃ、たまには豪勢な食事もする。レストランにも行く。だけど、日々の満足とは、一生懸命コストパフォーマンスの高いものを探したり、物の善し悪しの目利きになったり、そうして集めた食材を無駄なく使い切って満足したり、そんなことが実はうんと楽しいなと思うのだ。今日は、投げ売りコーナーのセロリ70円と、アボガド2個で150円が掘り出しものだったなあ…アボガドは、焼き鮭をほぐしたやつと海苔で巻いて、カリフォルニアロールにしようか、それともセロリとあえてサラダもいいな。重いキャベツも入った袋を自転車のハンドルにひっかけて、おっとっととバランスをとりながら家に向かう。いいんじゃないかね?この、ごく自然な感じの節約は。そして次のギャラが入ったら、大好きなフレンチのビストロに行くんだー!ひゃっほ〜う♪


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2010年08月06日

NIMESムック本撮影/ある、桃売りの話。

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今日もなかなか忙しい。昼、人形町の喫茶去(きっさこ)にて、フリー編集者のあんぽっちと久しぶりに会う。今年の春から彼女と組み、新しい本の出版に向けて動いているのだけど、なかなか本を出してくれる出版社を見つけるのが難しい。それでも、諦めては元も子もない。今、日本人が何を求め、どんな表現方法で癒されることを望んでいるのかを模索する。迎合するつもりはない。あくまでも、私が持っている物の見方で、どうしたら企画が通るのかを探っている。ところで、あんぽっちはとても優秀な編集者だ。彼女が一緒にひとつの方向性を見て、諦めずに動き続けてくれていることが、書き手の私にはなにより嬉しい。きっと次の本が出せたら、いいものになるだろうし、喜びは2倍に増すだろう。

人形町を後にして、恵比寿へ向かう。今日は、フレンチテイストのブランドNIMESさんのムック本撮影で、モデルとして起用して頂くのだ。しかしあれだ、すでに四十の私を、まだモデルとして使ってくださるブランドがあるなんて、とてもありがたいことだなあと素直に思う。NIMESさんのプレスルームで、今年の秋冬コレクションの中から、プレス担当の倉地さんと、服のコーディネートを考える。たびたび言っていることだが、私はおしゃれ人間ではない、という確たる自覚がある。だから、プロの方の意見は、一女性としても参考になるし、膨大なコレクションの中から着たいものを探させてもらうことも、すごく勉強になるなあと思う。今日は倉地さんの的確なアドヴァイスもあって、自分のスタイルに合った素敵なコーディネートが選べたと思う。

撮影後、まっすぐ家に帰るつもりだった。恵比寿から日比谷線に乗って我が街、人形町に降り立った。太陽はまだ暑い。甘酒横町に入り、鶏肉の名店`鳥忠´に寄って、胸肉を1枚調達した後、そのまま明治座に向かって歩き出した。途中、なにやらおばさま方の群がる露天売りを見つける。近寄ってみると、桃売りだった。リアカーの側面には`山梨産桃、5個で300円´とある。や、安い!物の良さを確かめてみると、玉も大きく、ものすごくお買い得と言わざるを得ない。それで、なんの猜疑心も働かず「5個ください。」と頼んでいた。すると、桃売りは「あー…5個で300円は、こっちのかなり痛んでるやつなんだよね。こっちのいいやつは、3つで500円。」と、恥ずかしげもなく言うではないか。はめられた。そう思った。普段なら、その手には乗るかと、すぐさまその場を立ち去るのだけど、むらがったおばさま方が口々に「これはいいものよ。」と囃し立てる。後に引けなくなってしまった。先日、良いものを格安で売る八百屋`浜町プロデュース´で、3個250円の甘い桃をゲットしたばかりの自分としては、なんだかだまされた気しかしてこない。せめて良いものを選ぼうと手に取ると「ああ、だめだめ。桃は触った途端に痛んでしまうから、気になるやつを指差して。裏を見せてあげるから。」と、桃売りは言った。勝負だ。私は、重く甘そうな桃を次々に選んだ。桃売りが焦っているのがわかる。「お姉さん、目利きだね!」彼は目を見張った。「なに言ってんだ。こちとらパリのマルシェで、アラブ人の八百屋相手に、悪い物つかまされないよう修行してきた、百戦錬磨の平民目利きだ!」と口に出して言いたかったが、心の中で言って終わった。

3つの甘かろう桃を選び終え、500円払い、私は帰路についた。精一杯やったはずが、もう心配になっている。この500円が品物に見合った金額なのか、正直わからない。たとえ、あまり甘い桃ではなかったとしても、あの炎天下で言葉巧みに桃を売る、彼の努力を評価すべきか。いや、それはどうだろう。彼は、去り際にこう言った。「最近、わるい桃屋がこのあたりであこぎな商売しているみたいだから、気をつけて。」耳を疑った。それってあんたのことでしょう?!

とぼとぼとスーパーに立ち寄ると、やはり桃が売られていた。値段を見ると、今しがた買った桃よりも、ずっと玉のちいさい固い桃が、2個500円で売られていた。少し自信が湧いてきた。私は良い買い物をしたのかもしれない。でも食べて見るまではわからない。そして、冷蔵庫で1時間冷やした桃を食べた。やわらかく食べごろの桃は、たっぷりと重い水気を含んで、とても甘かった。勝った…。桃がおいしかったおかげで、彼は案外いい桃屋だったのかもしれない、というところで落ち着いた。そして、生ものの買い物とは、同じ値段でも、自分の選び方によって月とすっぽんくらいに値段の価値が変わってしまう、なかなかの大勝負なのだと思った。指先についた桃の匂いは、寝付くとき、手を顔にもってゆく自分の癖さえも、この夜は甘やかに思えた。

Photo1.写真の構図を考える、編集の室賀さん、倉地さん、そしてフォトグラファーのトビタさ     ん。(左から)e-MOOK『NIMES 2010 AUTUMN/WINTER COLLECTION』は、
    宝島社より2010年10月8日発売予定。

   2.夏に秋冬ものを撮る、こうしたファッション撮影。
     涼しい顔をしながら暑さと戦っているのです。(今年の夏は、これまた強烈!笑)

   3.桃。


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2010年08月02日

致し方なく食べたい、AとかBを。

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ここ数日、東京を離れていたのでメールやら仕事やら、ノートブックのフタを開けた途端にわらわらとなだれ込んでくるものの、どうも調子が悪い。2週間ほど前から風邪みたいな症状が続いているが、一向に良くならないので、病院に行ってみることにする。ここは、婦人科でもお世話になっている病院で、今日は呼吸器科で診てもらうことにした。

午後の診療の予約を入れた後、病院地下にある食堂へお昼ごはんを食べに出かけると、しまったー…遅かったか!しょぼいAとかBの定食をお目当てにやってきたのだけど、それはもう終わってしまってて、ちょっと豪華なハンバーグ定食とかしかなかった。ハンバーグ定食の方が、いいじゃない。多分、みなさんはそう思われるだろう。しかし、こうゆう昔ながらの病院食堂で食べるなら、やっぱり安くてしょぼいAとかBの定食に限る!というのが、食のマゾ、猫沢エミのキモチなのである。この、やる気のない食堂の空気。TVから流れるこれまたやる気のない国会中継を見ながら、一応栄養計算はされている病院ならではの、宙ぶらりんな覇気のない味付け。く〜、たまらん。選べてもAかBという、狭い選択肢の中で味わう`これしかない感´も大好き。私は変にグルメな反面、給食とか、容疑者が取調室で刑事さんにおごってもらうカツ丼とか、シチュエーションにがんじがらめにされた食べ物を、致し方なく食べることに妙な恍惚感を覚える変わり者なのである。

昔、影山民夫の`ボルネオホテル´を読んだときのこと。ストーリー中、悪天候でホテルが宿泊客に用意できる夕食が限られてしまうシーンがあるのだけど、そこに出てきた野菜のカレーと、スチームドライスがものすごく記憶に残っていて、今でもカレーを食べると「あー…こんな味だったのかしら?」なんて思いを馳せることがある。そんなわけで、今日は思いを果たすには不十分な、ちょっと豪華なハンバーグ定食を食べる羽目になってしまった。いいんだけど〜、これだって街の洋食屋さんに比べれば、十分覇気がないし、味もぼんやりしている。でも、求めていたのは、もっと徹底的に覇気がないAとかBの定食だったんだあああ。

そんなことはさて置き、肝心の診察ですよ。問診票を丁寧に見たお医者さんに、胸のレントゲンと肺機能のテストを命じられるも、肺には異常がないことがわかった。(でも気管支には不備があるようだ。)そして、言い渡された病名は「うーん。逆流性食道炎ですね。」…やっぱり。実は、数ヶ月前、この病院の耳鼻科の方で同じ診断をされていて、薬を出してもらっていたのだけど、途中で飲むのを辞めてしまっていた。そうです、私が病気と自分の身体を舐めていたのです。というようなことを先生に白状すると、「なんだー、そうだったのか。だーめーだーよ〜〜。この病気、長引くやつだからちゃんと薬飲まないとー。」と普通に怒られた。風邪かと思ってた咳き込みも、胃液が食道を逆流して器官に入るために起こっていた様子。

そして、この病気の主な原因はストレス。しかし、ストレスのない生活とは、仕事をしなくていい生活のことで、仕事をしないとストレスどころか生きてゆけない場合、いったいどうすればいいんだろう?と考えればまた胃が痛い。現代人の生き様って矛盾してるわ〜…しかし、どうにかしないといけないが、どこから考えればいいのかすらわからん。などと思いながら、薬をもらい家に帰り、とりあえず頭をからっぽにして寝てみる。うーむ、なんとかなるじゃなんとかならないのだけど、とりあえず今日のところは、どうとでもなるだろうと思って、寝るしかないにゃー。

Photo.不本意〜〜!こんな豪華なものを食べるつもりはなかったのだが。
   でも、飛び散った大根おろしが、やる気のない風情を醸していて
   なかなか良い。そっけないプラスチックのおぼんや食器も合格です。


posted by 猫沢エミ at 00:00| パリ ☀| 食べ物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする