2010年09月21日

天才さぶちゃん

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世の中には「天才」というカテゴリがあるが、厳密には何をもってして「天才」と言わしめるのか、定義するのはとても難しい。ちなみに私の勝手なイメージでは、「秀才」はとてもまじめで、「天才」にはどこかすっとぼけた愛らしさがあるように思う。天賦の才を持って生まれたが故、それにともない、常人にはないナイスキャラクターっていうのかな?何かこう良きにつけ悪しきにつけ、おまけがついている、そんな気がするのだ。そうゆう意味も含めて、さぶちゃんは愛すべき天才という気がしてならない。

あ、さぶちゃんとはアコーディオニストの田ノ岡三郎くんのことである。彼とはもうかれこれずいぶん長いこと、一緒にプレイしている尊敬すべきミュージシャン仲間のひとりなのだけど、さぶちゃんを見ていると「普通の人とは明らかに脳の使い方が違うなあ〜」と思うのだ。一度聞いた曲を、ほぼ完璧に演奏できちゃうところとか、コードを突然変えても、すぐさま移調して演奏できるところなんかは、純粋に音楽の才なのだけど、それ以外の部分もとにかく興味深い。

さぶちゃんはすぐに眠くなる。どこでもぐっすり眠ることができる。私がパリでアパルトマンを借りていた頃、さぶちゃんが日本から遊びにきたことがあった。友人も招いて皆でランチを楽しんだ、暖かな午後の昼下がりだった。通りに面した私の寝室へ、さぶちゃんはいつの間にか移動していて、私たちはそのままダイニングでおしゃべりをしていたんだけど、開け放った寝室の窓の外で、フランス人がふたり、何かを見て驚いているのに気がついた。「見て!あの人、死んでるのかしらっ?!」あわてて寝室へ言ってみると、さぶちゃんはぐっすりとお昼寝中だった。しかも、死後硬直した死体のように、体の下半分がベッドからまっすぐに突き出たまま…。私は感心してしまった。どこをどうしたら、この体勢で熟睡できるのか。その格好は荒巻鮭にも似ている。荒巻鮭のさぶちゃん。かわいいなあ。

また別日のエピソードとしては、こんなのもある。ある日、ライブのリハーサルをしていた私、ギターのまるさん、そしてさぶちゃん。休憩時間に近所のコンビニに出かけたさぶちゃんとまるさんだったが、まるさんがひとり先に帰ってきて、何やらおかしそうにしている。

「今さあ、コンビニ行ってみたら、さぶちゃんが店の前で背中丸めてなんかしてたの。それで`さぶちゃん、何してるの?´って声かけたら、がっと振り返って`す、すみません!買い食いです!´だって。(笑)」

さぶちゃんの面白さを助長するキャラのひとつとして上げられるのは、さぶちゃんは基本的にとても真面目で礼儀正しいということ。それ故の面白さ、良さってあると思うんだなあ。そんなさぶちゃんが久しぶりに、猫沢ライブに参加。本日、リハーサルでした。やっぱいいよ、さぶちゃん。キャラクターも、素晴らしいアコーディオンも!

渋谷リエゾンのチケット、大好評につき、ほんの数枚追加出ました!ご予約はお早めに。



●さぶちゃん、オフィシャルサイト
http://www.tanookasaburo.info/

Photo.今日のさぶちゃんのシャツ!んも〜、キャラにぴったんこ。
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2010年09月07日

苦節14年、初めて自分の歌をカラオケる。

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夜、久しぶりに古くからの友人、週刊新潮編集部のキノッピとその相棒・クマちゃんと共に呑むことになった。このふたりは私の大学時代からの友達で、この頃のノリをしょったまま長く良い付き合いが続いている。人形町の焼き鳥屋さんでいい感じに呑んだり食べたりした後、めずらしく自分からカラオケに行かない?と誘ってみた。「実は、デヴュー14年目にして、初めて私の曲がカラオケに入ったの。」というと、ふたりは「ええ〜?!それはぜひ行かなくちゃだ!」と、喜んでカラオケ屋さんに向かった。

ちなみに入った曲は`ミルクの冠´。ミクシィの私のコミュニティで、ファンの方々が`猫沢の曲をカラオケに入れよう´とうトピックスを立ててくださり、情熱的な集中投票の後、めでたく苦節14年?目にしてカラオケに曲が入ったのだった。ヒット曲もないマイナー歌手の自分の曲を、長い間愛し続けて投票してくださったファンの方々のパワーと気持ちに頭が下がる思いだった。それで、投票の中心人物となったファンの方から「猫沢さんの曲、配信が決まったようなんですけど、どうゆうシステムで入るのか?ご本人に連絡が行くのか?どうなんでしょうね。」というメールを頂き、これは私も何かせねばと思い、ダイレクトにカラオケ会社に電話をしてみた。担当部署に電話をまわしてもらい、事の経緯を説明したが、そもそもアーティスト本人が電話をする、などということはめったにないらしく、結構担当者さんの声にもうっすらと困惑の色が伺えた。(笑)今回入った`ミルクの冠´以外にも、投票対象となる候補曲が上がっていることもこの電話で知ったのだが、あいにく私のコロムビア時代のCDはほとんどが廃盤になっていて、音源が入手できない曲は、配信候補の対象から外されて投票ができないことも知り、私が直接音源と歌詞を担当者さんへメールで送る事にした。あはは、気さくなアーティスト〜。いやいや、こんくらいやりますとも。ファンの方々の気持ちを思えば、普通のことですよ。

そんなわけで、私がパリへ行っていた今年の5月に配信が始まり、ファンの方から「10回連続で入れて歌ってみたんですけど、難しいのなんの…」なんていうメールがやってくるようになった。で、本人はなぜすぐさま歌いに行かなかったのかといえば、ただ単純になかなか時間がなかったのと、なんだかちょっと怖いような気もしていたからだと思う。曲の再現レベルが低かったらどうしよう…とか、そんな感じで。カラオケ屋さんについたキノッピ、クマちゃん、私の3名は、「記念すべき初歌いなんだから、2、3曲歌ってのどを温めてから…」なんて言っていたのに、酔っぱらったクマちゃんがいつのまにか入れてしまい、キノッピはトイレに行ってしまい、私は反射的につい歌ってしまった。(笑)自分の曲をカラオケで歌うというのが、なんだかぴんとこない非現実な感じだったのと、感動する前に、まるでライブのリハをやっているような感覚で「あ、今のところもうちょっと歌い込み足りなかった。」だの「音程甘いな。」なんて思ってしまって、想像していたのとずいぶん違った初歌いとなった。けれど、その後、ふたりがお祝いに!と、ウーヴクリコのシャンパンを景気よく1本開けてくれて、その友達思いなふたりや、やっぱりファンの方々の気持ちにちょっとうるっときた。

なんでも続けていると形になるチャンスが巡ってくるのだなあ。これからもマイナー歌手であり続けるであろう予感100%だけど、いい音楽を作って歌ってゆくことも変わらないだろう。だから、一生懸命やってゆこうと思った。ちなみに、配信されているカラオケシステムはジョイサウンドです。みなさんもカラオケに行かれた際には`ミルクの冠´歌ってみてくださいね。ちなみに曲の再現度はかなりのハイレベルでした。


Photo.  決して売れている歌手ではありませんので、本人映像なんてあるわけがないのですが、
    でももうちょっと曲と合った映像だったら、もっとうれしーなーみたいな。。。笑



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2010年09月03日

カヒミ・カリィ、そのひと。

日中、慌ただしく仕事を終えて、夕方から東京ミッドタウンのビルボード・トーキョーへ向かう。グラフィックデザイナーの真舘アニーに誘われて、カヒミちゃんのライブへ行くのだ。カヒミ・カリィ、言わずと知れた90年代渋谷系のミューズ。しかし、そんな肩書きは、私の中でもうずいぶんと前から違ったおもむきのものへと変わっていた。

カヒミちゃんとは、10年以上前に大阪行きの新幹線の中でばったり遭遇して以来、回数こそさして多くないものの、一回一回会うたびに思い出深い付き合いを続けている。そんな彼女が、ママになって元気にしていることを、最近雑誌で知った。久しぶりに会うの、楽しみだなあ。そして進化しているであろう音楽もとても楽しみだ。そんな気持ちで、都内で唯一好きな、おしゃれ集合ビル、ミッドタウンへと向かったのだ。

新作アルバム`It’s Here´をひっさげての3年ぶりのライブ。競演は、大友良英、ジム・オルーク、山本達久、石橋英子という通好みの素晴らしいメンバー。そして、舞台に現れた彼女は、ぐっと大人の魅力を増していた。たとえるなら黒御影石。黒にほんのりとシルバーの光沢がのったような、渋い光に満ちていた。そして、以前とかわらぬ誰にも手の届かない愛らしさも。ここ数年、カヒミちゃんが傾倒するフリージャズや現代音楽の要素がふんだんに盛り込まれた音楽は、崩壊の匂いを漂わせるくせに、きちんと世界の限界のふちをわかっている猫が闊歩してゆくよう。なんと素晴らしい!そしてなんとハイセンスなのだろう。とらえどころのないリズムの上に、確かなグルーブと詩情が踊る。天井へむかって、彼女の編んだ複雑で素敵なレースの巨大なカーテンが舞い上がってゆくのが見えた。

昔から思っていることなのだけど、カヒミちゃんは自身と自身の発する意識に対してのプロデュース能力がずば抜けている。それは、自前で作詞作曲、歌も楽器もとなんでもやるわりには、というか、なんでもやっちゃうからこそフィールドが狭くなりがちな私のようなミュージシャンよりも、人の才を見極めて、自分自身が直接そこを作るよりももっと高度な次元のことを人にやらせてしまうことが、実はどれだけ難しいかという話。これは、才のある人たちを惹き付けて、彼女に芸術という捧げものをさせる女神的な資質がなければできないことなのだ。そうゆう真の意味での`ミューズ´という呼び名を、私はカヒミちゃんへ贈りたい。

ライブの後、楽屋へちょっぴりお邪魔。すると、本当に久しぶりなのにとても気持ちよく出迎えてくれて、娘の和(にき)ちゃんもだっこできたー!んだけど、すぐに「ママー!」と逃げられた。(笑。そりゃそうだ)「なんだか、エミちゃんのことが頭に浮かぶ瞬間があって、会いたいなーって思ってたの。」と、カヒミちゃん。テレパシーだね。私も、カヒミちゃんのことはふと頭に浮かぶことがよくあったもの。今日は、本当に素晴らしい音楽をありがとう。また、会いましょう。

http://www.kahimi-karie.com


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2010年08月07日

スノッブ!ミウラくん /精神ちゃんと体ちゃん。

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夕方、半蔵門線の高津へレコーディングへ行く。ここのところ、DJの三浦信くんがニューアルバムを作っていて(11月に生まれるお嬢さんのために作っている、というところがとてつもなく素敵!)そのうちの何曲かのフランス語ナレーションを担当しているのだ。ひとつは、ボリス・ヴィアンの`うたかたの日々´の序文を美しいトラックにのせての朗読。ひとつは、三浦くんの思い描く、このアルバムのコンセプトを三浦くんに自身になりきってのナレーション。そして最後の1曲`彼女たちにはわからない´の、やはりナレーションを今日これから録ることになっている。フランス語のナレーションは難しい。それは、日本語でもその文章の意味をきちんと解釈して話すのが難しいのと同じで、どう理解して、どう抑揚をつけるか?スピードは?イントネーションは?と、様々なことをふまえて、曲ごとに演じることが難しいのである。

三浦くんと高津駅で待ち合わせをしていたとき、ふと前を見ると、あれっ?!
MONCEAU FLEURES-モンソー・フルールがあるじゃないの!モンソー・フルールとは、フランスでも最大規模のお花屋チェーン店。パリ市内でもあちらこちらで、見かけるお店なのだ。それが日本に上陸していただなんて、知らなかった。せっかくなので、スノッブ・三浦くんと共に、フランス繋がりということで、写真にパチ。

レコーディング後、エンジニアの平野さんと三浦くんと共に高津駅前の居酒屋で打ち上げ〜。たーのしい♪おふたりとも結構酔い酔いで帰路につくも、私は、「本番はこれからだ。」モード。よっぽど渋谷で途中下車して、久しぶりに朝まではっちゃけようとしたが、体ちゃんが引き止めた。「こらこらエミちゃん、体調万全じゃないでしょう?今、無理すると後にこたえるよ。」すると精神ちゃんが横からすかさず「大丈夫だよー。今日はのりのりなわけでしょう?じゃ、朝まで行っちゃいなよYou!」「精神ちゃんのバカバカ!この間、病院行ったの誰なのよ!」…という具合に、私の中には、体を司る`体ちゃん´と精神を司る`精神ちゃん´のふたりが共存している。

精神ちゃんは、凶暴でタフで浮き沈みが激しく、のりのりのときに彼女を制御することは難しい。そんな精神ちゃんを収めておく体ちゃんは、精神ちゃんの傍若無人に100%応えられるほど、タフではない。彼女は慎重で、意外とデリケートなのだ。「うう…今日も弱った体ちゃんを凶暴な精神ちゃんが朝まで振り回そうとしている。」ぐっと手を握って渋谷駅を通過する。精神ちゃんはすこぶるつまんなそうにしている。それを見た体ちゃんが「あっ…精神ちゃん。ほら、読みかけの古井由吉の小説持ってたじゃない?」と、うまく振った。つまんなそうに鼻をほじっていた精神ちゃんは、体ちゃんの作戦にまんまとはまり、あっという間に小説を夢中になって読み出した。しめしめ…精神ちゃんにうまくエサを与えられたぞ。この小説は、テーマが重暗いから、精神ちゃんのいい鎮静剤になるはずだ。。。さすが散々痛めつけられてきた体ちゃん、ずいぶんと学んだものだ。

体ちゃんの思惑通り、家のある駅につくころには、つい先ほどまで、あんなに朝まで呑んだくれたがっていた精神ちゃんは神妙になり、素直に家に向かって歩き出した。それを見た体ちゃんが優しい微笑みで言った。

「精神ちゃん、今日は私とひとつになってゆっくり眠ろうね。寝る前に、精神ちゃんの大好きな`うぬぼれ刑事´見せてあげるよ。Oさんが録画しているはずだから。」

Photo1.スノッブ!ミウラくん。の、ニューアルバム`Je suis snob´は、今年秋、ハピネスレ     コードより発売予定!いや、お世辞抜きで超かっこいいトラック満載です!

   2.スタジオの天使、ちんちらのシロちゃん。平野さんの愛猫です。
     今日も癒された〜。


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2010年03月11日

ミニマル家内手工業&スティーヴ・ライヒ

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 いつものように、朝、ロイヤルカナンの退院サポートパテの食べっぷりを確認しつつ、ピキにお薬を飲ませる。最初は私も上手に飲ませることが出来なかったのだけど、今ではすっかり慣れ、ピキも嫌がりはするものの、スムーズに飲んでくれるようになった。3錠あるので、口を大きくあけて喉の奥にぽいと放り込んで、あむ、と口を閉じさせる。その後、喉をやさしくさするとピキは、んぐんぐと飲むのである。お薬を飲まなくてもよいように、早く治るといいねピキ。

母、終日ライブの準備で右往左往。今日は、出来上がってきた新作商品、モレスキン・ポストカード用袋の設計をする。行動は男っぽいのだが、子供の頃から、女の子らしい趣味(料理、お菓子つくり、ポプリつくり、裁縫)なども同時に大好きで、切ったり縫ったりはわりと得意。もっと得意なのは、パターンのない立体を自分でパターンを起こして、適当に作っちゃうこと。今まで作った一番大きなものは、中学校のときに吹奏楽部のパーカッションだった時分、大太鼓のケースをキルティングで作ったアレかな。大太鼓の寸法を測って、設計図(こうゆうのって設計図って言わないよねえ?製作図?)を起こして、ミシンで立体の太鼓ケースを作ってゆくのである。今も実家に置いてある古い足踏みミシンで、中学生がひとり謎の物体をカタカタ夜なべして作っているのを見た母が、半ば呆れ、半ば関心したように「あんた、本当にそうゆうの得意よねえ…。」と言ったのを覚えている。(他にも、トライアングルケースや合わせシンバルケースなどを作りました。ちゃんと、ファスナーも長さをはかって近所の手芸屋さんで作ってもらったものを、きれいに取り付けるのです。)そういや、エッフェル塔のキーホルダーから立体のぬいぐるみも作ったなあ…。まあ、作ること全般が好きで、作る前に「これ、作るの大変だろうな。」などと一切思わず、作りたい一心で最後まで突っ走ってしまう。そんなことを思い出しながら、ポストカードの袋なんかちょろいちょろい…と舐めてかかっていたら、薄くて繊細な紙が布よりも非常に扱いにくい素材ということがわかり、出だしちょっと難航。

こうゆう単純作業には、ミニマル音楽が必要だ!と、スティーヴ・ライヒの名盤‘Different Trains’をかける。ライヒもこのアルバムも、私の人生における大事な音楽トップ10に入るもの。しかし…執拗な反復音楽は、ピキには毎度のこと不評で「どうせなら、あたしのお気に入りのマルコス・ヴァーリをかけてにゃっ。」と、ぷいと向こうへ行ってしまった。ああ〜…ごめんよお。ママ、袋100枚問屋制家内手工業しなきゃいけなくて、それにはミニマル音楽が不可欠なんだよお。。。袋も音楽も超ミニマルな作業が夜更けまで続くの巻。



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