2010年06月16日

読まずに感じる、パリの羅針盤。

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いやー、パリのメテオ(天気予報)ほど当てにならないものはない。先週、予定していたBonzour Japon12月発行号(予定)のサンマルタン運河特集撮影は、当てにならないメテオ&気まぐれなパリジャンのごとき不安定なお天気により、今週へ延期となった。今朝も、フォトグラファーのミカちゃんと不安な面持ちで「天気、持つかねえ…。ま、どのみち読めないのなら、こちらも動物的カンのみで決行!」と電話で取り決めた。

空を見上げると雲の流れがはやい。悪くなるようにも、また晴れるようにも見える。パリは古い建物でできた自然の森だ。天気も、人の気分も猫の目のように変わる。だから、既成概念は役に立たない。すべては自分の中にある羅針盤にピンときた、何かを信じて動くべし。というわけで、駅前で朝ごはんのクロワッサンを買い、メトロの中でもぐもぐと食べ、1軒目の取材先であるレストランへ向かう。途中、レピュブリックで大規模なマニフェスタシオン(デモ行進)に出くわす。この季節はマニフの盛り。メトロもよく止まるから、注意が必要だ。

レストランは、とてもサンパでおいしかった…と、取材中、コーディネーターのあっちゃん&フォトのミカちゃんと共に「食べ物の文章表現って難しい!」という話に花が咲く。本当においしいものを食べても、ただ「おいしい。」と書いただけでは、まったくそのおいしさが伝わらないことがままある。歌詞の世界でもそうだけど「君が好きだ〜。」と歌われても、思わず「嘘だろ〜。」と返したくなるような欺瞞を感じるから不思議。そこには、人間の微細で複雑な感情がかならず伴うから、そのおいしかったり、好きだったりする核心に薄くはりついている苦味や毒も一緒に組み込まねば、人はすんなりそれをイメージできない気がする。人生と同じなんだな、きっと。甘みだけより、塩みも加えたほうがより甘さが引き立つような。

2件目の取材先のアクセサリーショップでは、かわいいラッセルテリアが出迎えてくれた。名前を‘ポンディシェリー’という。南インドの街の名前をとってつけたのだと、ジュエリーアーティストのアニエスは言った。ポンディシェリーは、とてもいい子で、テニスボールを口にくわえてきて、しきりに「遊んで」とせがむ。表情が明るくて、とても安定した気を放つ子だ。子供も動物も、一緒にいて安定した気を放つ子は、きちんと愛されている子たちだ。思わずピキを思い出す。彼女も安定した気を放つ子だった。犬を特別好きだと思ったことは、あまりないのだけど、ポンディシェリーみたいな子だったら、犬もいいなと思った。そして、猫と違っていつでもどこでも一緒に居れるのは、それはそれは幸せだろうと思った。

空がまた晴れてきた。さあ、今のうちに運河を渡る船の写真を撮ってしまおう。ミカちゃんが岸辺で画角を決めてスタンバイしている。私は空を見上げ、しきりに雲の動きを読む。目で読むのではなく、心で。すると、船が運河を通り過ぎるベストのタイミングで、太陽が顔を出した。いまだ!
 
こんな風にして、パリでは生きるのがいい。また、別な言い方をすれば、こんな風に生きられるから、パリはいい。


★写真1.‘今日のメニュー’を黒板に書き込む、オーナーシェフのカンタン。たぶん、パリで一番おいしいチーズケーキを武器とする、このレストラン情報は、Bonzour Japon12月10日発行号にて!(発行月がずれることもあります。)お見逃しなく。

写真2.ポンディシェリーは、とてもいい子。犬も本当に良いものだね。

posted by 猫沢エミ at 06:36| パリ ☁| Bonzour Japon | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする